2024年冬CCS特集:アフィニティサイエンス
記述子計算の機能を強化、量子計算をクラウド対応へ
2024.12.03−アフィニティサイエンスは、計算科学にフォーカスし、創薬・材料科学・情報科学関係のソフトウエアの販売、コンサルティングや受託研究などのサービスを提供している。取り扱っているのは海外の製品が多いが、毎年安定して機能強化が行われるため、更新需要によって事業展開も安定している。
多くの製品の中で実績が高いのが、伊アルバサイエンスの「AlvaDesc」(分子記述子計算ソフト)、「AlvaBuilder」(de novo分子設計ソフト)、「AlvaModel/AlvaRunner」(QSAR/QSPRモデル作成ソフト)、「AlvaMolecule」(分子データセットの可視化・分析ソフト)などの製品群。今年秋にバージョンアップが行われた。このうち、AlvaDescは多数の記述子を計算できるユニークなソフトで、最新バージョン3.0では34番目の新しい記述子ブロック「SASA descriptors」を含む133種の新しい分子記述子を追加。全部で5,799種の記述子計算が可能になった。機械学習で多くの説明変数を提示できるメリットがあり、国内でも人気のソフトだ。
今回は、さらに3次元座標計算機能が実装されており、SMILESやSDFなどで入力された3次元座標を持たない分子に対しても3D記述子を含むすべての記述子の計算が可能。距離幾何学法に基づき、EMBEDアルゴリズムによる計算結果をユニバーサルフォースフィールドを用いて最適化し、分子の3次元座標を求めている。同社では、アルバサイエンス製品に関するオンライン講習会を定期的に開催。ハンズオン形式で操作法も体験できるため、導入検討中のユーザーの参加も歓迎だという。
また、オーストリアのヤサラバイオサイエンスが開発している分子モデリングソフト「YASARA」も人気があり、着実にユーザーが増加中。分子動力学計算やドッキング解析など構造ベース創薬(SBDD)で必要な機能をひととおり備えていながら、非常に低価格なことが特徴。実験化学者でも簡単に使用できる使いやすさがありながら、マクロ機能やPython APIなどの専門家向けの機能も搭載しており、企業での導入が増えてきている。
さらに、米キューケム社の量子化学計算パッケージ「Q-Chem」については、来年1月からAmazon EC2に対応することがアナウンスされている。「Q-Cloud」の名称でSaaS(サービスとしてのソフトウエア)形式で利用することが可能。実用的な量子化学計算を行うためには、ハードウエアの準備が敷居になることが多いため、パワーユーザーにはありがたいサービスになりそうだ。
一方、同社は今年からサービス事業を別会社化し、兄弟会社のアフィニティネクサスを設立しているが、ソフトウエアのインストールやインテグレーション、共同研究などの業務を立ち上げている。今後は研究論文の発表などもこちらから行っていきたいという。