2024年冬CCS特集:化学情報協会

逆合成で立体化学を考慮、特許請求項の比較・解析も

 2024.12.03−化学情報協会は、科学技術分野の文献・特許、および化学物質情報の検索ソリューションとして、米国化学会(ACS)の情報部門であるケミカルアブストラクツサービス(CAS)との長年のパートナーシップのもと、一般の科学者にも使いやすい「CAS SciFinder」、特許調査などの専門家の高度な要求に応える「CAS STNext」を中心としたツールやサービスを国内の利用者に提供している。ハイペースでの機能強化が実施されてきており、使い勝手はますます高まっている。

 とくに、CAS SciFinderで注目されている逆合成解析機能「CAS Retrosynthesis」は、最終生成物から前駆体を予測し、反応検索結果と人工知能(AI)による予測反応を含めた合成ルートを提案することができる。今回、CASのコンテンツをもとに予測モデルの再学習が行われ、出力される合成ルートの妥当性が大幅に高まった。立体化学のルールセットを従来の10倍以上に増やすことにより、立体化学的におかしなルートが表示されるエラーが減少した。立体化学を考慮したのは商用ソフト・サービスでは初だという。また、別のルートを探索したい場合、立体選択制で代替反応を絞り込むことも可能になっている。合成ルートで使用する試薬も、価格や毒性の有無などをカタログ情報から参照することができるなど、実用性が高まっている。

 さらに、今年の秋には反応検索結果から各反応ごとに類似反応を検索する機能が追加された。「Get Similar Reactions」をクリックするだけで類似反応を取得できる。類似度はブロード、ミディアム、ナローの3段階で調整することが可能。そのほか、物性データ(実測値)の収録が大幅に拡大している。昨年から増やしてきているもので、18種類だったのが42種類の物性値を収録するまでになっている。

 一方、CAS STNextでは、特許請求項の従属関係をツリー形式で表示する「Interactive Claims Viewer」に新機能が追加される。これは、「Claimes Comparison」(ベータ版)と呼ばれ、同一特許が出願時と登録時で請求項の骨格に変化がある際、その請求項ツリーを並べて比較しながらその内容を確認することに役立つ。知財専門家には非常に役立つ機能だろう。また、特許の最終権利者に関する情報が強化されており、特許全文データベースの10種類にこの情報が追加された。いままでは、特許の出願人はわかったが、その特許を現在保有している者が誰かは収録されていなかったという。

 CAS STNextについては、来年以降に「CAS IP Finder powered by STN」に生まれ変わる計画も発表されている。これまで通りのコマンドライン検索、構造式検索に加え、ポイント&クリックによる新GUI、さらにテキスト検索はAIのアシストによる自然文検索(長文もAIが解析してくれる)も可能になる。こちらも開発が待たれるところだ。

 なお、CASでは生物学やライフサイエンス分野の製品展開も強化しており、今年5月には「CAS BioFinder Discovery Platform」をリリースしている。3〜4ヶ月ごとに新しいコンテンツや機能が加わっており、生理活性に焦点を当てた低分子創薬から抗体やペプチド、抗体薬物複合体(ADC)など、バイオ医薬品分野へと対象を広げていくとしている。


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