2024年冬CCS特集:QunaSys
大規模言語モデルを活用、コンソーシアムで学びの場
2024.12.03−QunaSys(キュナシス)は、生成AI(人工知能)のコア技術である大規模言語モデル(LLM)を材料研究に利用する可能性にいち早く注目し、今年4月からコンソーシアム「材料開発LLM勉強会」を開催。10月から第2期に進んでいるが、来年度以降も「LLM研究会」として活動を継続させる。コンソーシアムとしての機能を重視し、参加者数もさらに広げていきたいとしている。
同社は、量子コンピューターの実用化をソフトウエア面で支えることを目指しているスタートアップ。現在、量子コンピューター向けのミドルウエア開発などを進めているクオンタムソリューション事業部、量子コンピューターの用途開発を受託研究スタイルで手掛けるリサーチ事業部、本格的な量子コンピューター導入以前のデジタルトランスフォーメーション(DX)をターゲットとしたケミカルリサーチソリューション(CRS)事業部−の3部門に分かれて活動している。
さて、現在までのLLM勉強会では、自然言語処理の歴史やLLMモデルに関する基礎的な知識を学んだあと、実際にLLM開発ツールのDifyを操作するとともに、生成AIに質問する際のプロンプトのチューニング、外部情報を検索して回答に反映させるRAG(検索拡張生成)を使用するなど、手を動かす演習も行った。
参加者にアンケートしたところ、初期は「ユースケースは思いつくが、LLMの活用方法・フローがわからない」、「ユースケースが思いつかない、何をすればいいのかわからない」、「セキュリティ面への懸念がある」、「ハルシネーション(間違った情報)生成のリスクが大きい」など懸念が目立ったが、終盤では「LLMがどのように業務や日常に役立つかが具体的に理解できるようになった」、「LLMの可能性に非常に興味を持ち、積極的に学びたいと思うようになった」、「LLMの利点だけでなく、限界や課題についてもより明確に認識するようになった」などと意識が変化。具体的なユースケースとしては、高分子の物性予測、新規分子の合成、社内マニュアルや手順書のRAG実装、テクニカルサービスのためのデータ収集と活用−などのアイデアが出されたという。
10月からの第2期勉強会では、具体的にユースケースを検証することを図り、実験の提案や段取りを考えてくれるLLMエージェントの開発、学術論文から情報を抽出して研究に生かしてみる、分子生成LLMを構築し実際に使ってみる−などの取り組みが行われた。参加者はそれぞれ大きな手ごたえを得た模様だ。
来年度に予定しているLLM研究会では、前期の勉強会での講義内容を動画で常時閲覧できるようにするほか、LLMを利用した材料研究の最新論文や最新動向のレビュー、参加企業同士でのユースケース共有会の開催、またQunaSysが開発中のLLM関連ツールを利用してLLMの効果を実感できる機会を提供する。さらに、個別プランとして、LLMを使って論文や特許情報から知識を抽出するツールの導入・活用支援、個別ユースケースの探索など実問題でのLLM活用検証などのサービスを提供していく。