2024年冬CCS特集:シュレーディンガー

計算によるデジタル化学、製剤設計技術が医薬で注目

 2024.12.03−シュレーディンガーは、分子モデリング&シミュレーションで30年以上のイノベーションを積み上げてきたベンダーで、ライフサイエンスとマテリアルサイエンスの両分野で世界に1,800社近いユーザーがおり、受託研究サービスにも力を入れている。物理モデルと人工知能(AI)モデルを組み合わせたデジタルケミストリープラットフォームを提供している。

 とくに、「マテリアルサイエンススイート」は、原子・分子レベルのシミュレーションを行うパッケージソフトで、有機電子材料や高分子材料、触媒、半導体、電池関連、複合材、金属・セラミックス、消費財などの幅広い分野を対象にしている。

 多彩な機能の中には、ライフサイエンス系にも有効なものがあり、今年学会などで発表して評判が良かったのが製剤設計関連の機能。薬物の安定性や反応性、構造や光学・電子特性、溶解性、結晶構造を解析したり、製剤に関係した賦形剤の選択、薬物輸送特性、薬物表面の相互作用、相転移、薬物放出/薬物溶解、凍結乾燥などのシミュレーションを実施したりすることができる。

 とくに、機械学習については、低分子に加えてポリマーや結晶に関する記述子を用意しており、「AutoQSAR/DeepAutoQSAR」ツールを使って分子や結晶の特徴量を計算し、機械学習モデルの構築と評価を自動的に行うことが可能。学習用データが少ないときには、量子化学計算や分子動力学計算で得られる物理量を記述子とすることもできる。シミュレーションを行うため記述子算出にやや時間がかかるが、計算で得られるのは基礎的な物性値であるため、予測したい物性値との相関関係が明確になりやすいというメリットがある。

 製剤など複数の構成要素からなる混合系を対象にした機械学習は、各構成要素の配合比や分子構造などの化学情報を記述子に使用するが、構成要素がサンプルごとに異なっていても対応することが可能。訓練データに含まれない化合物を含む混合系に対する予測も行える。このため、単なる配合比の調整だけでなく、新たな構成要素、すなわち物質探索にも利用できる。こうした機能については、医薬品だけでなく、化粧品などの分野でも関心が高いという。モデル作成やモデルのアップデート作業は同社が請け負うことも可能である。


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