2024年冬CCS特集:ウェイブファンクション
ニューラルネットで加速、精密な配座解析実行に有効
2024.12.03−ウェイブファンクションは、使いやすさと美しさを備えたユーザーインターフェースから利用できる分子モデリングソフト「Spartan」を開発・提供している。今年、最新バージョンの「Spartan '24」がリリースされ、すでに多くのユーザーが更新したという。学会などでの展示に対する反響も高く、大学関係や民間企業も含めて新規案件も増加。同社の日本支店では、既存ユーザーへのサポートを充実させ、ユーザーの横への広がりで実績を伸ばしていく作戦を取っている。
Spartan '24は、利用できるCPUコア数が16コアまでと16コア以上の2つのパッケージが用意されている。高等専門学校(高専)や大学の学部生向けの教育用途でも使われているように、使いやすさ、わかりやすさが特徴だが、単に初心者向けというわけではなく、標準で並列処理が可能であり、最新の量子化学計算エンジンを内蔵しているため、高性能なハードウエアを用意して高度な使い方をするユーザーも少なくない。
とくに、今回の最新版は独自に開発した5つのニューラルネットワーク(NN)モデルを採用しており、配座異性体のエネルギー計算(分子力学)、密度汎関数法(DFT)による構造予測、異性体のエネルギー計算(ボルツマン分布)、エネルギー計算の改善、マルチステップのワークフローなどの処理性能を劇的に改善したことが特徴。天然物などの複雑で柔軟な分子構造を核磁気共鳴(NMR)データを用いて自動的に決定する「DFTを利用した化学シフト計算機能」を使用する際に有効で、計算負荷によって何十時間もかかっていた一連の処理をほぼ瞬時に終了させることができる。
11月末に5年ぶりとなる「Spartanユーザー会」を中央大学で開催したが、天然物の配座解析とNMR予測に関する機能にテーマを絞った内容で行われ、NNを実際に使用する方法についても詳しく解説された。この機能の共同開発者である弘前大学・橋本勝教授のオーガナイズで実施された。学生らも参加したとのことで、久しぶりのユーザー会は盛り上がったようだ。
日本支店では、Spartanの操作方法などのワークショップ動画を公開しており、これをみれば一通りの機能と使い方がわかるようになっている。今回のユーザー会の講義の模様やNNの使い方なども動画にして公開していく予定だという。天然物以外を対象としても、配座解析を精密にやってみたい研究者にとってNNは非常に有効であるため、Spartan '24の注目機能として広く知らしめたいとしている。