2025年冬CCS特集:TSテクノロジー

NEDOプロ成果事業化、3種のAIで合成経路創出

 2025.12.03−TSテクノロジーは、計算化学や人工知能(AI)などのシミュレーション技術を組み合わせて効率的な研究開発を支援することで化学産業の発展に貢献している。山口大学発の高度なノウハウをもとに研究受託やシステム構築サービスを提供する一方、手がけてきた新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)プロジェクトも大詰めに入ってきている。

 同社は、NEDOの「機能性化学品の連続精密生産プロセス技術の開発」(プロジェクトリーダーは中部大学の山本尚教授)に参画し、その一部である「合成プロセス設計技術の開発」に対する実施機関を担当。プロジェクトは最終年度であり、現在は研究成果の社会実装に向けた準備も進めでいる。開発目標は、物質設計から商業化までの研究工数を5分の1に削減することで、合成経路設計システム(SRDS)で合成経路を提案し、キネティクス(反応速度論)シミュレーションを組み合わせて有望な合成経路のスクリーニングを行う。

 また、同社が開発した「TSモチーフ法」を利用することにより、機械学習を用いて化合物の活性化自由エネルギーを予測する手法の実用化にも取り組んでいる。AIによって計算負荷が大幅に引き下げられることにより、SRDSが創出した多くの合成経路を効率的にスクリーニングする方法に結び付くとして注目しているものである。

 来年度以降は、こうしたソフトウエアをクラウド環境で順次利用するためのサービス提供を目指すことにしている。とくに、「合成経路創出AI」として事業化する計画で、今年11月に広島で行われた「ケモインフォマティクス討論会」や、12月15日からホノルルで開催される「環太平洋国際化学会議」(パシフィケム)で、合成経路予測やTSモチーフ法に関する研究発表を行っている。

 発表内容とも関係するが、今回のシステムは国内で開発された複数のSRDS、すなわち複数のAIを組み合わせて利用することが特徴。そもそも、AI(SRDS)ごとに合成経路創出の指向が異なるため、複数の意AIを使い分ける、または一緒に使うことが重要だという。具体的には、奈良先端科学技術大学院大学の船津公人教授らのグループで開発されている「AIPHOS/TOSP」と「AIPHOS/KOSP」、産業技術総合研究所で新たに開発された「AIst-syn」が利用されている。TOSPの指向は経験型で反応テンプレートがベース、KOSPは経験・論理ハイブリッド型の指向でベースは反応データベース、AIst-synは経験型指向でTOSPと異なる反応テンプレートをベースにしている。このように指向の異なる3つのAIとシミュレーションにより、一般的から革新的までの経路設計と最適な経路選択を可能にするとしている。

 最近ではデータ駆動型の研究により、多くの候補物質が生み出されるようになっているが、最終的には実際に合成して評価することが必要であり、合成経路創出AIへのニーズは大きいと予想される。


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